サイコセラピーのリスクについて
国家資格を議論する中で、サイコセラピー的関与によって起こりえるリスク(危険性)について充分に検討する必要性が議論されています。心理学的行為と医行為との関係を論じる上で、避けて通れない議論です。この点について、いくつかコメントをもらっています。
Afcpさん>ただ一部の医師が恐れている、そして僕自身も心配していますし、これまでに苦労もさせられたことがあるのは、心理療法を受けた、あるいは現に受けているケースが、著しい行動化、退行などを呈し、結局医療で「後始末」をさせられること、でもあるように思います。
bxq2uwさん>afcpさんは控えめにおっしゃっていますが、現に心理療法を受けているケースが著しい行動化や退行を起こすということであるなら、自然経過による増悪という側面があったとしても、少なくとも見立て違いということがあったのでしょうし、そこに起因する関わり方の間違いというのもおそらくあった上でのことでしょう。一言で言って心理臨床として質が低いという問題だと思います。これは質を向上させるということしかありません。どうやって向上させるか、これはまさに心理臨床の重要な課題です。
つなでさん>問題は、人に尻ぬぐいを押しつけるような心理療法(精神療法)のやり方、そのような心理療法の学び方にあるのではないかと思います。医師であれ、心理職であれ、しっかり勉強してトレーニングを積み、何より、勉強とトレーニングの仲間を持たないと、心理療法の実力はつくはずがないですね。心理療法をしている人どうしで、いかに研鑽を積むかということでしょうか。心理職の養成課程がそのような実力のつくものになるために、国家資格化のこともよく考えないといけないと思います。長年の心理療法の試行錯誤の成果が生かされるような養成がなされていかなければならないと思います。
サイコセラピーの持つ効果があることを前提にしながらも、一方で起こりえるリスク(危険性)についてふれてみたいと思います。以下のようになることを防ぐ見立て力は重要ですね。
① 薬物療法が必須のケースにサイコセラピーを続け状態を悪化させる
② 強い内的葛藤を言語化させ(アンカバーし)、状態を悪化させる
③ 家族の問題を安易に取り上げ強い家族間の衝突を誘発する
④ 枠を決めずに依存、退行させ、激しい行動化を誘発する
⑤ 強い依存的関係を築きケースが他のリソースを利用する可能性を奪う
⑥ 受療中ケースに医療へのネガティブな意見を伝え受療中断を招く
⑦ 自傷他害ケースにマネジメント的関与を行わず事故や事件が発生する
⑧ サイコセラピーでは対応できない状態なのに「対応できる」と考え対応してしまう
まだまだあるでしょうし別な表現もあると思いますが、ぱっと思いあたることを挙げてみました。
「①薬物療法導入せず悪化」については、心理療法的関与を行うものとして、常に気をつける必要があることです。心理療法家は、目の前に現れたケースに対して、サイコセラピーを行うことが適当か、それとも薬物療法の導入を第一選択として促すべきか、見立て判断する必要があります。またそのような見立てができるスキルを持つ必要があるでしょう。
「②内的葛藤のアンカバー」については、心理療法家のスキルそのものといってよいと思います。共感とか傾聴といった対応のみでは、この問題を避けることができないでしょう。見立てによっては、「聴かない」「語ることの危険性を話し合う」といったかかわりが重要となる場合があります。一方で、サイコセラピーにアンカバーによる混乱はある程度はやむをえないという判断もあるかもしれません。
「③家族間の衝突の誘発」ですが、家族に解決力がない若者に、「家族でよく相談してください」とカウンセラーが伝えたばっかりに、家族で大喧嘩になって若者が家出してしまった、こんな私の苦い経験があります。スーパーバイザーには「家族でよく相談してください」と伝えてはいけない場合があるんだと怒られました。
「④依存や退行の問題」ですが、これはこれまでもコメントで何度も取り上げられている、サイコセラピーの「副作用」ともいうべきものですね。これに対応するためのトレーニングとスーパーバイズとを、心理士は充分に受ける必要があるでしょう。専門家とそうでない人とを分けるのは、この対応のスキルがあるかないかもひとつかなと考えます。
「⑤他リソース利用の可能性を奪う」です。すぐれたサイコセラピーは、本人の持つリソースを有効に活用し、また本人が自らそれを有効に利用することを促進するものだと思います。
「⑥受療中断を招く」については、ケースが現在の治療に不満を持っていて、セカンドオピニオンを求めてきたり、他の医療機関を紹介してほしいと要望してきた場合に、デリケートな問題となります。もちろん、現在の主治医とよく話し合うように伝えることが多いのですが、本人がどうしても納得せず中断になってしまう場合があります。受療中ケースに対して地域の心理士はどのような相談機能を持つか、より深い議論が必要になると思います。
「⑦自傷他害ケースへのマネジメント」「⑧できないことをできるという」については、別なエントリーを挙げて詳しく議論したいと思います。特に、自傷他害のリスクマネジメントに関して、心理士は甘い場合がよくみられます。医療機関であれば主治医が入院や保護者連絡などマネジメントしてくれますが、地域においてはそれぞれの場所の管理者と連絡をとりながら、心理士は対応する必要があります。その意味では、医療機関より地域の心理士の方が高いマネジメント力を求められるといってもよいでしょう。
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